最近は仕事がキツい。
どうしようもないほどに忙しいわけではないが、仕事のことを考えるとしんどい。じゃあ他のことを仕事中も考えて気分を逸らそうとしても、その余裕が自分にはない。はあしんどい。
しかし、、
2月25日の今日はそうでもなかった。
患者さんに夕食を配った後。
ふと椅子に座り、目の前のパソコンに向き合い電子カルテにログインしようとした。
何の気もなしにナースステーションの壁にかかる時計を見上げた。
18時27分45秒。
その針の角度が瞬時にその時間を伝えるとともに、その時間が自分の中の何かを思い出させた。
「あ。…去年の今頃は…」
力加減なんかせずに手拍子をしてたなー。
マスクをして…3人の名前を…ステージ正面のスタンドから叫んでたな。
MIKIKO先生、真鍋さんがスタンド下にいらっしゃったっけ…
—心電図モニターのアラーム音が鳴り響く。
その音が自分を現実に引き戻す。
白衣を着て看護師として仕事をしている自分が一瞬どこかへ消えていたのが、自分でも分かった。
—そこは…
東京ドームのスタンド席。
ツアーTに身を包み、逸る気持ちを抑えられず、椅子に座って居られない自分。
ステージは大阪、福岡、名古屋公演と同じもの…スモーク煙る巨大な空間には客入れの重低音に合わせた3人の登場を待ち侘びる数万人の手拍子…高まる周囲の熱気…
込み上げるP Cubed、ツアー、Perfumeへの思い。
あの時の気持ちが鮮明に蘇ってきた。
それなのに、白衣を着た自分は、キーボードに手を伸ばして電子カルテにログインをした。
そこから仕事が終わるまではPerfumeの事も、1年前の公演の事を思い出す事は無かった。
日付を変えた帰り道。
2月26日になっていた。
2月26日
その日付を見るだけで胸がざわついてしまう。
2020年2月26日。
あの日グッズ売り場で知った中止。
ドームの壁を隔てた中にいる3人に会えず、2月を駆け抜けたPerfumeのベストを提げたライブのよりによって千穐楽が中止になるという知らせ。
その時は不思議なことに正直「悲しい」という気持ちで心がいっぱいにならない自分がいた。
「まあ…仕方ないか…」
自分に言い聞かせていた。
「この状況なら中止にせざるを得ないよな…」
「Perfumeは!悪くない!」
しかしそれが揺るがない絶対的な事実だ。
この状況が飲み込めない自分がいた。
この状況を飲み込みたくない自分もいた。
でも、発表から時間が経つごとに警備員さんからの中止を伝えるアナウンスがずーっと聴こえてくる現実や、俺と同じく今日の日を待ち侘びた「正装」に身を包んだファンの周りの雰囲気がなんとも言えない気持ちを駆り立てる。
このドームの中に確実に居るついさっきまでリハーサルに取り組んでいたPerfumeの3人。たくさんのスタッフの方々の気持ち、ライブを楽しみにドームに向かうファンの仲間達の事を考えると、勝手に自分が本当にやり切れない気持ちでいっぱいになり、ドームから離れられない自分がいた。
自分だけじゃなかった。
たくさんの仲間がいた。
正確にはどうして良いか分からなかったし、もしかしたら「ライブやっぱりやります!」なんて言うはずもないけど、心のどこかでその時を待ってた自分がいた。
見る事ができなくなったライブの開演時間が刻々と近づく。
陽が伸び始めている事を感じていた2月下旬。それでもビル風の寒さが身に沁みたなぁ。
それなのにShake Shackで何故か冷たいレモネードを飲んだな。
そしてShake Shackを出るとドームからわずかに聴こえる重低音と破裂音。
あの時は幻聴かと思った。
でも後に分かったポリループの花火だったんだね。
大阪公演初日に今までずっっっっと憧れてた、ポリループの花火の演出が見られた時に叫び声とも違う情けない「うっはぁ!!!」という感嘆の声と涙が溢れた事を思い出したり。
3人が客席からあの絶景を見る事ができたのはとても良かったと思うな。いつもあんな景色を見せてくれているんだよって知って欲しかったから。
あの日の事はこんな風に忘れることは出来ずにいるし、POP FESでまたあの時から止まっていた針が動き出した事実もあるけど、しかしまだ心の中に引っかかる気持ちがあるのも事実。
よく見かける「2.26事件」という表現は好きじゃない。(その表現を使う方を特定し、その人個人を全否定する意味ではないのであらかじめ。)
確かにあの日はライブが中止になり、あの日から色んなことが変わった気がする。
しかし…あの日あの瞬間から、今まで変わらないものがあると思う。
Perfumeが俺らファンのことを思い続けてくれているということではないだろうか。
感染者が日に日に増えていく中、25日の東京ドーム公演では払い戻しの対応を受け付けたり、精一杯の努力をしてくれていたように思う。そして25日のSpendingはじまりでの「今日は会いにきてくれてありがとう!」そのあ〜ちゃんの言葉が、Perfumeを信じて着いていく俺らと、俺らを信じてライブをしてくれたPerfumeとの強い信頼関係を勝手に感じてしまったり。26日の中止の決断はチームPerfumeにとっても断腸の思い、苦渋の決断だったことは想像に容易い。
そして26日夜のこのツイート。
3人が謝ることなんてない。
スタッフさんだって謝ることはない。
ドーム天井にレーザーで映し出された「ありがとう」の文字と、3人からの生の言葉。
「また会いたいです。」
また別の形で俺らと会える機会を必ず作ってくれるんだって、とっても安心した。
そしてTwitter上に溢れる、
#Perfumeありがとう のタグのツイート達。
Perfumeのことを心配するツイート、残念な気持ちを吐露するツイート。
本当にファンがPerfumeを思い、Perfumeが俺らのことを思ってくれている、まさに愛に溢れていたと思う。
そんな日の事を俺は事件とは呼びたくない。
もちろん…言葉に出来ないほど悔しい。悲しい。
全てはコロナが憎い。あの日から今日までも猛威を振るい続け、世界中の大切なものを奪っていく。この先も分からない。
あの日から温め続けている思いが沸点を超えて蒸発してしまう時も正直あった。
立て続けに中止になるライブにフェス。
単なる趣味ではなく、生き甲斐といえる音楽。
その中でもPerfumeは人生をかける存在だ。
沸騰してしまうのも仕方ない程だ。
しかし不思議とそういう蒸発してしまいそうな時にタイミングよくPerfumeさんは活動をしてくれて、カラカラの心に雪解け水のように澄みきった生きる気力を与えてくれる。
先日の生配信では夏の新曲、秋のイベントの発売があった。
もうそれだけで今年も頑張るしかない!
そんな気持ちにさせてくれる。
それに加えてあんな可愛い新宝島のダンス見せてくれるんだから…たまんねえよ。
今日であの日から一年が経った。
一年はあっという間だ。
そんな今日言えることは…
今日もなんだかんだ元気でいられてありがたい。今日もこれからもPerfumeの3人が元気で笑っていてくれると良いな。ここまで読んでくれたみんなも元気で過ごそうね!
そしてこの思いがPerfumeの3人へ届くといいな。
また早く会いたいです。
#ありがとうPerfume